
今朝の出勤途上の地下鉄の中で、ぼくの斜め向かいに座っている男性、目の前に、どこか見覚えあるパンフレットを真剣に見ている。よく見ると、当社のあのヘミシンクのカタログじゃありませんか?
膝の上にアディダスのパック。リュックともいい、ぼくのおじいさんが戦争中担いでいたのは背嚢。スニーカーはぼくと同じナイキ。
先週の忘年会の帰り、遅くなった。駅に行くと
ふざけたやつだな、ぼくに何か因縁をふっかけるつもりか。とまで思ってしまった。むっと来たが、こんなとこで喧嘩になっても・・・とにかくぼくは酔っぱらっている、くたびれている。だまって、ぼくは座った。カバンにぼくの尻がぶつかったが、知らんぷりしながら・・・。
彼の、胸元で飲み物をはさむ両手をみた。全て事情が飲み込めた。彼のカバンを足下におろし、テーブルを出して、ストローのついたカフェオーレのコップをのせた。
「これでいい?」「はい、ありがとうございます」
彼は手を使わないで器用に飲んだ。
「他にすることはない?」「ええ大丈夫です」
そのままお互いに無言で何十分か過ぎた。
突然、車内放送がはじまった。
「○○で人身事故が発生しました。次の駅で停車します」
と。かれは「まったく、何ていうこと」ため息をもらした。せっかく急行に乗ったのに、思いは同じだ。お互いに苦笑いをしながら、旧知のようにぼやき合った。
何駅目かでぼくの降りる駅になって、彼の望みを聞いてあげた。テーブルを元通りにカバンを彼の膝に。
「これでいい?」「はいありがとうございました」「じゃあ気をつけて」
ぼくはホームのベンチにすわって、次の電車を待った。ダイヤは乱れている。家までたどり着くか?とホームを見つめていると、
「あの、すみません」声の主を見るとあの青年だ。
彼の不自由な手元を見ると、なんと、ぼくの携帯じゃないか。
「いや、あ、ありがとう。申し訳けない」
座席に落としていたみたいだ。不自由な手で携帯を持って、ホームをおりてぼくを捜してくれたんだ。最初の青年に対するぼくの態度・・・ますます恥ずかしい思いがした。その携帯で息子に電話、駅まで迎えを頼んで家にたどり着いた。
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